漢詩紹介

読み方

  • 汪倫に贈る<李白>
  • 李白舟に乘って 將に行かんと欲す
  • 忽ち聞く 岸上踏歌の聲
  • 桃花潭水 深さ千尺
  • 及ばず汪倫が 我を送るの情に
  • おうりんにおくる<りはく>
  • りはくふねにのって まさにゆかんとほっす
  • たちまちきく がんじょうとうかのこえ
  • とうかたんすい ふかさせんじゃく
  • およばずおうりんが われをおくるのじょうに

字解

  • 汪 倫
    安徽省涇県(あんきしょうけいけん)にある桃花潭の村人酒造家でしばしば李白に酒をもてなした人
  • 踏 歌
    手をつなぎ足を踏みならしてうたう歌
  • 桃花潭水
    潭はふち 川の水 安徽省涇県にある渕の名
  • 不 及
    桃花潭の水の深さも汪倫の心の深さには及ばない

意解

 私は今、小舟にのって、いよいよ桃花潭を出発しようとしている。突如岸の上で足を踏みならしながら歌う声がきこえてきた。
 この桃花潭の水は、深さ千尺もあるという。それでもその深さは、汪倫が私を送ってくれる情の深さには及ばないのだと、汪倫の友情の深さをのべている。
汪倫や村人たちの素朴な感情と、別れを惜しんでくれる深い心とに感謝した詩である。

備考

 李白五十五歳の作、見送る者が旅立つ人に贈る詩が多い中で、この詩は送られる李白が見送る汪倫に詩を贈っている。(この作品は留別の詩という)
詩の構造は仄起こり七言絶句の形であって、下平声八庚(こう)韻の行、聲、情の字が使われている。

結句 転句 承句 起句

作者略伝

李 白 701-762

 盛唐の詩人。杜甫(とほ)と並び称される。蜀(しょく)の錦州彰明県青蓮郷(きんしゅうしょうめいけんせいれんきょう)の人で青蓮居士(せいれんこじ)と号した。幼にして俊才、剣術を習い任侠の徒と交わる。長じて中国各地を遍歴し、42歳より44歳まで玄宗皇帝の側近にあり、後再び各地を転転とし多くの詩をのこす。安禄山(あんろくざん)の乱に遭遇して、罪を得たがのち赦される。62歳、病のために没す。