詩歌紹介

読み方

  • さみだれを あつめてはやし もがみがわ

語意

五月雨=旧暦の6月。梅雨の雨。
最上川=歌枕(古歌の中に多く詠みこまれた地名)。山形・福島の県境の吾妻山(あづまやま)に源を発し、庄内平野を潤し酒田(山形県)で日本海に注ぐ。富士川・球磨川(くまがわ)とともに日本三急流の一つ。

句意

 庄内の山野に降り続く梅雨の雨を集め、水をみなぎらせて、水勢いよいよ早い。なんと豪壮な最上(もがみ)の急流よ。

季語

 五月雨ー夏

出典

 「奥の細道」

作者略伝

松尾芭蕉  1644-1694

 江戸時代前期の俳人。伊賀(三重県)上野の人。
 城主一族の藤堂良忠(とうどうよしただ=俳号蝉吟=せんぎん)につかえて俳諧の影響を受け、蝉吟の死後、京都で俳諧・古典を学びさらに江戸に出て深川の芭蕉庵に住み、俳諧師として身を立てた。当時盛んだった談林(だんりん)派の俳風にあきたらず自然や人間の生活の中に古典文学の美の精神を新しく探し出した、蕉風という新しい俳風をうち立てた。元禄7年(1694)大阪にて風邪と過労が原因で客死。享年51。

備考

 元禄2年(1689)5月27日、山形県大石田の俳人高野一栄(いちえい)宅で催された句会での連歌の発句(ほっく)として詠まれた。「五月雨を集めて」というスケールの大きい把握と、「早し」という「一言の断」的直截(ちょくせつ)簡明な措辞(そじ)とが織りなす力強く雄渾(ゆうこん)なリズムが、増水期の量感と速度感とをズバリと言い止めている。