漢詩紹介

吟者:松野春秀
2010年11月掲載

読み方

  • 從軍行<王昌齢>
  • 秦時の明月 漢時の關
  • 萬里長征 人未だ還らず
  • 但龍城の飛將をして在らしめば
  • 胡馬をして 陰山を度らしめず
  • じゅうぐんこう<おうしょうれい>
  • しんじのめいげつ かんじのかん
  • ばんりちょうせい ひといまだかえらず
  • ただりゅうじょうのひしょうをしてあらしめば
  • こばをして いんざんをわたらしめず

字解

  • 從軍行
    楽府題の一つで軍人の遠征の辛苦を歌ったもの
  • 龍 城
    匈奴(きょうど)の地名で陰山山脈の向こうにあり 現在の内蒙古(うちもうこ)自治区にある
  • 飛 將
    前漢の将軍李広のこと 匈奴が恐れて飛将軍という
  • 陰 山
    山西省の北方から内蒙古に広がる山脈、万里の長城とゴビ沙漠にはさまれた位置にあり漢と匈奴との国境の役割をなす

意解

 秦の時代にも輝いていた明月、漢の時代から設けられていた関所、今も昔も変わりがない。兵士達は遠い遠い辺境に出征して未だに帰ってこないのだ。かって篭城で活躍した飛将軍と云われた李広のような名将がいたなら、胡(えびす)の馬に陰山を越えて攻めてくるようなことはさせないであろうけれど、今立派な将軍がいないのは歎(なげ)かわしい。

備考

 この詩の構造は平起こり七言絶句の形であって上平声十五刪の韻の關、還、山の字が用いられている、その平仄関係は次の通りである。

結句 転句 承句 起句

作者略伝

王昌齢 698-755(諸説あり)

 盛唐の詩人、字は少伯(しょうはく)、京兆(けいちょう 陜西省(せいせんしょう)西安)の人、一説には江寧(こうねい 江蘇省南京)の人ともいう。開元15年(727)の進士(しんし)、校書郎(こうしょろう)から氾水(河南省)の尉(い)となるも素行おさまらず各地に転任する。七言絶句の名手、李白(りはく)、孟浩然(もうこうねん)、高適(こうせき)と交友あり、安禄山の乱の時郷里に帰り刺史(しし 長官)閭丘暁(りょきゅうぎょう)に殺される。「王昌齢詩集」五巻がある。