漢詩紹介

読み方

  • 春を探る<戴益>
  • 盡日春を尋ねて 春を見ず
  • 杖藜踏み破る 幾重の雲
  • 歸り來りて試みに 梅梢を把って見れば
  • 春は枝頭に在りて 已に十分
  • はるをさぐる<たいえき>
  • じんじつはるをたずねて はるをみず
  • じょうれいふみやぶる いくちょうのくも
  • かえりきたりてこころみに ばいしょうをとってみれば
  • はるはしとうにありて すでにじゅうぶん

字解

  • 盡 日
    朝から晩まで 終日
  • 杖 藜
    あかざの杖をつくこと

意解

 一日中、春を探ね歩いたが春らしい風景を見る事ができない。杖をつき山野(さんや)の雲を踏みわけたが徒労におわった。
 家に帰って何気なしに梅の枝をとってみると、いつのまにか蕾もふくらみ春の訪れをみせている。

備考

 この詩は禅の悟りの境地を示すものとして、古来有名である。
承句「芒あい踏遍隴頭雲」芒あい(ぼうあい)踏(ふ)み遍(あまね)し隴頭(りゅうとう)の雲
転句下五字「適過梅花下」適(たまたま)過(す)ぐ梅花(ばいか)の下(もと)
 又は「笑撚梅花嗅」笑(わら)って梅花(ばいか)を撚(ひね)って嗅(か)げば  となっているものもある。詩の構造は仄起こり七言絶句の形であって、上平声十二文(ぶん)韻の雲、分の字と十一眞(しん)韻の春の字が通韻して使われている。

結句 転句 承句 起句

作者略伝

戴 益  生没年不詳

 作者は宋の時代(960~1275)の人というだけで生卒年その他不詳。この一首によって名が伝えられている。