漢詩紹介

CD④収録 吟者:谷澤暁声
2016年3月掲載
読み方
- 廬山の瀑布を望む<李白>
- 日は香爐を照らして 紫煙を生ず
- 遙かに看る瀑布の 前川に挂かるを
- 飛流直下 三千尺
- 疑うらくは是銀河の 九天より落つるかと
- ろざんのばくふをのぞむ<りはく>
- ひはこうろをてらして しえんをしょうず
- はるかにみるばくふの ぜんせんにかかるを
- ひりゅうちょっか さんぜんじゃく
- うたごうらくはこれぎんがの きゅうてんよりおつるかと
字解
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- 瀑 布
- 大きな滝〔漢語的表現)
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- 廬 山
- 江西省九江の南にあり古来名山としてしられる 名士の荘を営む者多し
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- 香 爐
- 爐山の峰の一つ香爐峰のこと
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- 紫 煙
- 山気が日光に映じて紫色にかすんで見えるもの
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- 銀 河
- 天(あま)の川
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- 九 天
- はかり知れぬ高い天
意解
日光が香爐峰を照らすと光に映えて紫のかすみが立ち、非常に美しい。遙かに川の向こうに滝がかかっているのが見える。
その雄大なること、三千尺もあろうかと思われる飛ぶような流れがまっすぐ落ちているのは、丁度、天の川が天空より落ちてくるかのようである。
備考
承句の前川が長川となっているものもある。この詩の構造は仄起こり七言絶句の形であって、下平声一先(せん)韻の煙、川、天の字が使われている。
結句 | 転句 | 承句 | 起句 |
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作者略伝
李 白 701-762
盛唐の詩人。杜甫(とほ)と並び称される。蜀(しょく)の錦州彰明県青蓮郷(きんしゅうしょうめいけんせいれんきょう)の人で青蓮居士(せいれんこじ)と号した。
幼にして俊才、剣術を習い任侠の徒と交わる。長じて中国各地を遍歴し、42歳より44歳まで玄宗(げんそう)皇帝の側近にあり、のち再び各地を転転とし多くの詩をのこす。安禄山(あんろくざん)の乱に遭遇して、罪を得たがのち赦される。62歳、病のために没す。