漢詩紹介

CD④収録 吟者:南方快聖
2016年4月掲載
読み方
- 鐘山即事<王安石>
- 澗水聲無く 竹を繞って流る
- 竹西の花草 春柔を露す
- 茅簷相對して 坐すること終日
- 一鳥啼かず 山更に幽なり
- しょうざんそくじ<おうあんせき>
- かんすいこえなく たけをめぐってながる
- ちくせいのかそう しゅんじゅうをあらわす
- ぼうえんあいたいして ざすることしゅうじつ
- いっちょうなかず やまさらにゆうなり
字解
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- 鍾 山
- 金陵(今の南京)の東北にある名山で一名 紫金山ともいう
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- 澗 水
- たにがわの水 春のやわらかさ
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- 茅 簷
- かやぶきの家の軒
意解
谷川の水は音もなく静かに竹の林の間をめぐって流れている。その竹の林の西には花や草が春の柔らかさをあらわしのどかである。
かやぶきの軒下で鍾山に向かいあって一日中座っていると、鳥のなき声も聞えず、山はいよいよ静かである。
備考
この詩は鍾山隠棲中の元豊(げんほう)八年(1085)の作で隠逸(いんいつ)生活の高尚な情趣を詠じている。詩の構造は仄起こり七言絶句の形であって、下平声一尤(ゆう)韻の流、柔、幽の字が使われている。
結句 | 転句 | 承句 | 起句 |
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作者略伝
王安石 1021-1086
北宋の詩人、文章家、政治家。唐宋八大家の一人。字は介甫(かいほ)、半山(はんざん)は号。慶暦(けいれき)二年(1042)の進士、淮南(わいなん)の判官より宰相(さいしょう)となり財政再建のため新法を実施して実績をあげたが神宗(しんそう)が崩(ほう)ずるや、失脚、鍾山に隠棲、元祐(げんゆう)元年(1086)失意の中に没。年66。
唐宋八大家 唐宋二代の八人の大文学者 韓愈(かんゆ)、柳宋元(りゅうそうげん)(以上、唐)。欧陽修(おうようしゅう)、蘇洵(そじゅん)、蘇軾(そしき)、蘇轍(そてつ)、曽鞏(そうきょう)、王安石(以上、宋)。