漢詩紹介

CD④収録 吟者:奥山紅雋
2016年7月掲載
読み方
- 雪梅<方岳>
- 梅有り雪無ければ 精神ならず
- 雪有り詩無ければ 人を俗了す
- 薄暮詩成って 天又雪ふる
- 梅と併せ作す 十分の春
- せつばい<ほうがく>
- うめありゆきなければ せいしんならず
- ゆきありしなければ ひとをぞくりょうす
- はくぼしなって てんまたゆきふる
- うめとあわせなす じゅうぶんのはる
字解
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- 精 神
- いきいきとした勢いがあって美しいこと 魂のこもったもの
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- 俗 了
- 平凡なものとなってしまう だめにする 全く俗に化する 魂(こころ)のないものとなる
-
- 併
- 合わせると同じ
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- 十 分
- 満ち足りる 完全 一ぱい
意解
梅が咲いていても雪が降っていないと風景が生き生きとしたものにはならない。雪が有っても詩心が起きないようでは、せっかくの風景も平凡なものになってしまう。
夕暮れ時、詩が出来上がり、雪が降ってきた。梅と雪と詩を合わせて春の情趣を十分に味わえるものである。
備考
梅・雪・詩の字を連鎖的に用い、機知と理屈の中に軽妙な味わいの有る詩である。絶句は普通同字を重出しないのが例であるが此の詩は意識して多用している。詩の構造は平起こり七言絶句の形であって、上平声十一眞(しん)韻の神・人・春の字が使われている。
結句 | 転句 | 承句 | 起句 |
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作者略伝
方 岳 1199-1262
南宋の頃の人。字は巨山、号は秋崖。き門(きもん 安徽(あんき)省)の人。紹定(しょうてい)5年(1232)の進士。吏部侍郎(りぶじろう)・秘書郎正丞(ひしょろうせいじょう)となり、のち南康・袁州(なんこう・えんしゅう 共に江西省)の刺史となった。才気鋭く詩文にすぐれ、名言佳句(かく)が多い。もともと農民の出のためか農村の景物を詠った詩が多く、秋崖小稿三十八巻が有る。