漢詩紹介

読み方
- 春風<白居易>
- 一枝先ず發く 苑中の梅
- 櫻杏桃梨 次第に開く
- 薺花楡莢 深村の裏
- 亦道う春風 我が爲に來ると
- しゅんぷう<はくきょい>
- いっしまずひらく えんちゅうのうめ
- おうきょうとうり しだいにひらく
- せいかゆきょう しんそんのうち
- またいうしゅんぷう わがためにきたると
字解
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- 櫻
- 桜桃(ゆすらうめ)バラ科
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- 薺 花
- なずな(春の七草の一つ)
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- 楡 莢
- にれの實のさや
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- 深 村
- 山里
-
- 道
- 言(い)うに同じ
意解
春風は先ず宮中の庭園の梅の一枝を開花させ、ゆすらうめ・あんず・桃・梨としだいに開花させる。又、山深い里では「なずな」の花を咲かせ、「にれ」のさやにも吹きわたる。すると私は、春風が私のために来てくれたのだと言いうれしく思うのである。
備考
この詩の構造は、平起こり七言絶句の形であって、上平声十灰(かい)韻の梅・開・來の字が使われている。転句と結句の平仄が逆になった拗体である。
結句 | 転句 | 承句 | 起句 |
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作者略伝
白居易 772-846
中唐の大詩人。名は居易(きょい)、字は樂天(らくてん)、号は香山居士(こうざんこじ)、陝西省謂南(せんせいしょういなん)の人、太原(たいげん)の人(山西省)ともいう。家は代々官吏、早くから詩を作り、16歳「春草の詩」、17歳「王昭君」の作あり。貞元(ていげん)16年(800)進士、元しん(げんしん)と親交あり、江西省九江の司馬に左遷された事もあるが、ほぼ中央の官にあり、刑部尚書(ぎょうぶしょしょ)にて没す。年75歳。「長恨歌(ちょうごんか)」、「琵琶行(びわこう)」の大作あり。「白氏長慶集(はくしちょうけいしゅう)」、「白氏文集(はくしもんじゅう)」等我が国にも伝わり、平安文学に感化影響を与えた。