漢詩紹介

CD②収録 吟者:小坂永舟
2015年 4月掲載
読み方
- 絶句(二)<杜甫>
- 江碧にして 鳥逾白く
- 山靑くして 花然えんと欲す
- 今春 看又過ぐ
- 何れの日か 是歸年ならん
- ぜっく(二)<とほ>
- こうみどりにして とりいよいよしろく
- やまあおくして はなもえんとほっす
- こんしゅん みすみすまたすぐ
- いずれのひか これきねんならん
字解
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- 江
- 成都の町を流れる錦江
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- 碧
- 碧玉(エメラルド)の色 ふかみどり
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- 逾
- ますます
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- 靑
- 若草や若葉の緑色
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- 然
- 燃に同じ
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- 看
- 見ているまに 時間や状態のすみやかに経過するのを形容する言葉
-
- 歸 年
- 家に帰る時期
意解
錦江の水は深緑に澄みわたり、その上に浮かぶ鳥はひときわ白い。山の木は緑に映え花は燃えんばかりに真っ赤である。
今年の春もみるみるうちに過ぎていこうとしている。いったい、いつになったら故郷に帰れるときがやってくるのであろうか。
備考
広徳2年(764)、杜甫53歳の作。二首連作の第二首である。第一句と第二句は対句になっている。
この詩の構造は仄起こり五言絶句の形であって、下平声一先(せん)韻の然、年の字が使われている。
結句 | 転句 | 承句 | 起句 |
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作者略伝
杜 甫 712-770
盛唐の詩人で李白と並び称せられ、中国詩史の上での偉大な詩人である。字は子美(しび)。少陵(しょうりょう)または杜陵と号す。洛陽に近い鞏県(きょうけん)の生まれ、7歳より詩を作る。各地を放浪し生活は窮乏を極め、安禄山の乱に賊軍に捕らわれる。律詩に巧みで名作が多い。湖南省潭州(たんしゅう)から岳州に向かう船の中で没す。年59。李白の詩仙に対して、杜甫は詩聖と呼ばれる。