漢詩紹介

読み方
- 獨り敬亭山に坐す<李白>
- 衆鳥 高く飛んで盡き
- 孤雲 獨り去って閑なり
- 相看て 兩ながら厭わざるは
- 只 敬亭山有るのみ
- ひとりけいていざんにざす<りはく>
- しゅうちょう たかくとんでつき
- こうん ひとりさってかんなり
- あいみて ふたつながらいとわざるは
- ただ けいていざんあるのみ
字解
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- 敬亭山
- 安徽省宣城県の北にある山の名 町のすぐ郊外にあり東は宛渓(えんけい)に臨み南は城内を見下ろす景勝の地 斉(せい=南朝 六朝)の謝=月へんに兆=(しゃちょう)が宣城の太守(たいしゅ)だった時しばしば訪れたという
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- 衆 鳥
- 多くの鳥
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- 兩不厭
- 「兩」は李白と敬亭山 ともにあきることなく
意解
たくさんの鳥も空高く飛んでいなくなってしまい、ひとひらの雲も流れ去って後はひっそりと閑(しず)かになった。
お互いが見つめあい、ともに見あきることが無いのは、ただ悠然とした敬亭山だけだ。
備考
この詩の構造は、仄起こり五言絶句の形であって、上平声十五刪(さん)韻の閑、山の字が使われ、第一句と第二句は対句になっており、第三句は下三連になっている。
結句 | 転句 | 承句 | 起句 |
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作者略伝
李 白 701-762
盛唐の詩人。杜甫(とほ)と並び称される。蜀(しょく)の錦州彰明県(きんしゅうしょうめいけん)青蓮郷(せいれんきょう)の人で青蓮居士(せいれんこじ)と号した。幼にして俊才、剣術を習い任侠の徒と交わる。長じて中国各地を遍歴し、42歳より44歳まで玄宗(げんそう)皇帝の側近にあり、のち再び各地を転々とし多くの詩をのこす。安禄山(あんろくざん)の乱に遭遇して、罪を得たがのち赦される。病のため没す。年62。