漢詩紹介

読み方

  • 貧交行<杜甫>
  • 手を翻せば雲と作り 手を覆せば雨
  • 紛紛たる輕薄 何ぞ數うるを須いん
  • 君見ずや管鮑 貧時の交わり
  • 此の道今人棄てて 土の如し
  • ひんこうこう<とほ>
  • てをひるがえせばくもとなり てをくつがえせばあめ
  • ふんぷんたるけいはく なんぞかぞうるをもちいん
  • きみみずやかんぽう ひんじのまじわり
  • このみちこんじんすてて つちのごとし

字解

  • 翻手
    手のひらを返して上に向け下に向ける くるくる変わる
  • 輕薄
    人情の薄い
  • 何須數
    数える必要もない 問題にしない
  • 管鮑
    管は春秋時代斉(せい)の桓公(かんこう)に仕えた名相管仲 鮑はその親友の鮑叔 管仲は若い頃貧乏で鮑叔と 一緒に商売をし もうけは自分の方が多く取ったが 鮑叔は決して腹をたてなかった 後に管仲は宰相となり「我を生みし者は父母 我を知る者は 鮑叔なり」といった 貧乏時代苦楽を共にし いつまでも変わらぬ友情を「管鮑の交」という

意解

 手のひらを上に向ければ雲となり下に向ければ雨となる。くるくると変わる人情の軽薄さは問題にするまでもない。
 よく見たまえ、あの管仲と鮑叔の貧しい時の交わりを。あれが本当の友人というもので、今の人はこの交わりを土くれのように捨ててしまっている。

備考

 杜甫は仕官のため長安に上ったが、試験に及第せず仕官も出来ず、求職のため貴人の家を尋ねた時、門前払いにあいこの詩を作る。天宝11年( 752)41歳の作。「唐詩選」に所収されている。
 詩の構造は古詩の形であり、韻は上声七麌(ぐ)韻の雨、數、土の字が使われている。

作者略伝

杜甫 712-770

 盛唐の詩人で、李白と並び称せられ、中国詩史の上での偉大な詩人である。 字は子美(しび)。少陵(しょうりょう)または杜陵と号す。洛陽に近い鞏県(きょうけん) の生まれ、7歳より詩を作る。各地を放浪し生活は窮乏を極め、安禄山の乱に賊軍に捕らわれる。 律詩に巧みで名作が多い。湖南省潭州(たんしゅう)から岳州に向かう船の中で没す。 年59。李白の詩仙に対して、杜甫は詩聖と呼ばれる。