漢詩紹介

吟者:中谷淞苑
2017年11月掲載
読み方
- 山中の月<眞山民>
- 我れは愛す 山中の月
- 炯然として 疎林に掛かるを
- 幽獨の人を 憐れむが爲に
- 流光 衣襟に散ず
- 我が心は 本 月の如く
- 月も亦 我が心の如し
- 心と月と 兩つながら相照らし
- 清夜 長えに相尋ぬ
- さんちゅうのつき<しんさんみん>
- われはあいす さんちゅうのつき
- けいぜんとして そりんにかかるを
- ゆうどくのひとを あわれむがために
- りゅうこう いきんにさんず
- わがこころは もと つきのごとく
- つきもまた わがこころのごとし
- こころとつきと ふたつながらあいてらし
- せいや とこしえにあいたずぬ
字解
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- 炯 然
- 光りかがやくさま 「炯」はあきらか ひかり
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- 疎 林
- まばらな林 さびしい林
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- 幽獨人
- ひとり世間から離れて住んでいる人 ここでは作者自身
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- 衣 襟
- 衣や襟もと ここでは自分のからだ
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- 本
- もともと いつも
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- 相 尋
- 共にもとめあっている 「尋」はおとずれる
意解
私は山中の月が皎々と輝いてまばらな林を照している光景を愛している。
月は、世間から離れて独り静かに暮らしている私を憐れむかのように、その光を私に投げかけてくれる。
もともと私の心は月の様に純真で、なんの邪心もなく澄み切っているが月もまた私の心と同じである。
心と月とはたがいに通じ合って、照らし合い清らかな夜をいつまでも尋ね合っております。(自分の清き高き心境は、月と同じであると)
備考
この詩の構造は、五言古詩の形であって下平声十二侵(しん)韻の林、襟、心、尋の字が使われている。
作者略伝
眞山民 1274頃
中国宋末の進士で哲学者である。名は桂芳(けいほう)といい、出身地などくわしいことはわからない。宋末の遺民で世を逃れ、人に知られることを求めず、自分で山民とよぶ。歐陽修、朱熹、蘇東坡と共に宋代の代表的詩人といわれ、特に敍景詩にすぐれている。