漢詩紹介

吟者:中島 菖豊
2005年4月掲載

読み方

  • 兒に示す<陸游>
  • 死去すれば 元知る 萬事空しと
  • 但悲しむ 九州の 同じきを見ざるを
  • 王師北のかた 中原を 定むるの日
  • 家祭 忘るる無かれ 乃翁に告ぐるを
  • じにしめす<りくゆう>
  • しきょすれば もとしる ばんじむなしと
  • ただかなしむ きゅうしゅうの おなじきをみざるを
  • おうしきたのかた ちゅうげんを さだむるのひ
  • かさい わするるなかれ だいおうにつぐるを

字解

  • 九州同
    中国全土の統一、そのためには北中国を占領している金を追いださなければならない。九州とは古代中国全土を九つの区域にわけられていた伝説による呼び名。
  • 王 師
    朝廷から出兵する軍隊。官軍
  • 中 原
    中国中央部の平野の黄河流域の一帯
  • 乃 翁
    汝の翁、父の自称 乃父(だいふ)、乃公(だいこう)に同じ

意解

 死んでしまえば万事が空しくなってしまうとかねてから知りぬいてはいる。それでも天下が統一されるのをこの目で見ずにおわるのが悲しくてならない。
 やがて帝王の軍隊が北に進んで、中原の地を平定した日にはわが家の祖先のまつりをして、この父の霊に報告するのを忘れてはならぬぞ。

備考

 陸游は一般の詩人ではなく、愛国の至情に燃える詩人であり、放翁辞世の詩である。
 この詩の構造は仄起こり七言絶句の形であって、上平声一東(とう)韻の空、同、翁の字が使われている。

結句 転句 承句 起句

作者略伝

陸 游 1124-1209

 中国南宋前期の人、号は放翁、官職に在り、詩人として南宋四大家の随一とさる。32歳から85歳の死に到るまでの50年間の詩作「剣南詩稿」85巻をのこし、総数一万首、晩年多作にして、その詩ことごとく充実す。愛国の詩人として常に北方平定を願っていたが果たされなかった。