漢詩紹介

読み方
- 重ねて楓橋に宿す<張継>
- 白髪重ねて來る 一夢の中
- 青山改まらず 舊時の容
- 烏啼き月落つ 寒山寺
- 枕を欹てて猶お聽く 半夜の鐘
- かさねてふうきょうにしゅくす<ちょうけい>
- はくはつかさねてきたる いちむのうち
- せいざんあらたまらず きゅうじのすがた
- からすなきつきおつ かんざんじ
- まくらをそばだててなおきく はんやのかね
字解
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- 楓 橋
- 江蘇省蘇州の西にあり南北往来の要路
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- 白 髪
- しらが頭
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- 青 山
- 樹木が青々と茂った山 故郷の山
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- 舊 時
- 昔 以前 往時
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- 寒山寺
- 蘇州の西郊楓橋の近くにある寺 唐の詩僧寒山が住んだことから名ずけられた
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- 半 夜
- よなか 夜半 中夜に同じ
意解
しらが頭になってふたたびこの地を訪れたが、実に夢の中にいるような心地がする。まわりの山々は変わり無く昔のままの姿である。
烏が啼きながら寝ぐらに急ぎ冴えた月が水の面に映るころ、寒山寺から打ち出す夜半の鐘の響きを枕を傾けてしんみりと聽きいったのである。
備考
この詩の構造は仄起こり七言絶句の形であって、上平声一東(とう)韻の中の字と、上平声二冬(とう)韻の容・鐘の字が通韻して使われている。
結句 | 転句 | 承句 | 起句 |
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作者略伝
張 継 生没年不詳
中唐の詩人。字は懿孫(いそん)、湖北省襄州(じょうしゅう)に生まれた。天宝12年(753)の進士。地方官より中央の検校(けんこう)祠部(しぶ)郎中(ろうちゅう)に至る。張祠部(ちょうしぶ)詩集一巻あり。『楓橋夜泊』の詩は内外に愛誦される。清の学者兪越(ゆえつ)の書いた石碑が寒山寺にある。