漢詩紹介

読み方

  • 金陵の圖<韋莊>
  • 江雨霏霏として 江草齊し
  • 六朝夢の如く 鳥空しく啼く
  • 無情は最も是れ 臺城の柳
  • 舊に依って煙は籠む 十里のつつみ
  • きんりょうのず<いそう>
  • こううひひとして こうそうひとし
  • りくちょうゆめのごとく とりむなしくなく
  • むじょうはもっともこれ だいじょうのやなぎ
  • きゅうによってけむりはこむ じゅうりのつつみ

字解

  • 金 陵
    南京の古称 六朝時代の都
  • 江 雨
    揚子江上に降りそそぐ雨
  • 霏 霏
    雨や雪など細かくしとしとと降りしきるさま
  • 六 朝
    呉(ご)・東晉(とうしん)・宋(そう)・斉(せい)・梁(りょう)・陳(ちん)の六ッの王朝
  • 臺 城
    宮城(六朝時代天子の御所)
  • 依 舊
    昔のまゝ 昔ながらに
  • もや かすみ

意解

 長江の春雨はしとしとと降りしきり、川辺の草は青々と一様に茂っている。六朝時代の栄華は夢のように儚(はかな)く消え去ってしまい小鳥もこれを悲しんでか、むなしくさえずっている。いちばん無情を感じさせるのは六朝の時代に植えられたこの台城の柳で、昔のままにもやがたちこめる十里の長い堤にけむっていることである。

備考

 この詩の構造は、仄起こり七言絶句の形であって、上平声八齊(せい)の韻の齊、啼、ていの字が用いられている。その平仄関係は次の通りである。

結句 転句 承句 起句

作者略伝

韋 莊 836-908?・910?

 晩唐の頃の詩人。杜陵(とりょう 陝西省(せいせいしょう)西安の附近)の人。字は端己(たんき)、中唐の詩人韋応物(いおうぶつ)四代目の子孫。 昭宗の乾寧(けんねい)元年の進士。校書郎(こうしょろう)に任ぜらる。当時四川省にいた王建が反乱を起こしたので、朝廷は李詢(りじゅん)を 正使、韋莊を補佐として宣撫(せんぶ)におもむかせたが、韋莊はそのまま王建(おうけん)につかえ、王建が後蜀(ごしょく)王朝をたてるのに協力して、吏部侍郎尚書同平章事(りぶじろうしょうしょどうべんしょうじ 宰相(さいしょう))に任ぜられた。蜀の開国の制度は皆韋莊の定めるところである。 後蜀の都、成都郊外の、かつて杜甫が住んだ浣花草堂(かんかそうどう)を修復して自分の屋敷にした。著書に浣花集十巻、その他がある。