漢詩紹介

読み方

  • 烏江亭に題す<杜牧>
  • 勝敗は兵家も 事期せず
  • 羞を包み恥を忍ぶは 是れ男兒
  • 江東の子弟 才俊多し
  • 巻土重來 未だ知る可からず
  • うこうていにだいす<とぼく>
  • しょうはいはへいかも こときせず
  • はじをつつみはじをしのぶは これだんじ
  • こうとうのしてい さいしゅんおおし
  • けんどちょうらい いまだしるべからず

字解

  • 烏江亭
    安徽(あんき)省和県の東北にある駅亭
  • 兵 家
    軍人戦略家
  • 事不期
    予期できる事ではない
  • 包羞忍恥
    恥辱に耐える
  • 江 東
    江南に同じ 長江下流付近 今の江蘇省南部から浙江省北部にわたる一帯を指す
  • 子 弟
    若者
  • 才 俊
    優れた人物
  • 巻土重來
    負けた者が土を巻き上げるような勢いで領土を占領し再び盛り返して攻めてくる
  • 未可知
    どうなっていったかその結果は分からない

意解

 勝敗は、戦略家でさえも予測できるものではない。たとえ敗れても恥辱に耐え再起を計ってこそ真の男子といえる。
 項羽の本拠地である江東の若者たちには優れた人物が多いので、土けむりを巻き起こすような勢いで今一度出直していたなら、どうなっていたか分からない。

備考

 項羽は秦末期の楚の人。秦の滅亡後、沛公(はいこう)と天下を争って垓下(がいか)で敗れ、烏江で自決。それを偲んで烏江亭を訪れたときに感懐を賦した一詩。この詩の構造は仄起こり七言絶句の形であって、上平声四支(し)韻の期、兒、知の字が使われている。

結句 転句 承句 起句

作者略伝

杜 牧 803-852

 晩唐の詩人。字は牧之(ぼくし)、号は樊川(はんせん)、京兆万年(けいちょうばんねん=陝西省長安県)の人。名家の出身にして828年進士に及第後、地方、中央の官を歴任し中書舎人(ちゅうしょしゃじん)となって没す。資性剛直、容姿美しく歌舞を好み、青楼に浮名を流したこともあった。「樊川文集」20巻、「樊川詩集」7巻あり、「阿房宮賦」(あぼうきゅうふ)は早年の作にして文名を高めた。年50。