漢詩紹介

読み方

  • 子を戒しむ<丘濬>
  • 男兒志を立つるは 青年に在り
  • 萬巻の詩書 旃を勉むるを貴ぶ
  • 少飮貪る莫れ 儀狄の酒
  • 勇爲須らく著くべし 祖生の鞭
  • 成材務めて 師友に親しむに在り
  • 保行祖先を 辱む休れ
  • 但看る古今 賢達の者を
  • 聲名留與して 後人に傳う
  • こをいましむ<きゅうしゅん>
  • だんじこころざしをたつるは せいねんにあり
  • まんがんのししょ これをつとむるをとうとぶ
  • しょういんむさぼるなかれ ぎてきのさけ
  • ゆういすべからくつくべし そせいのむち
  • せいざいつとめて しゆうにしたしむにあり
  • ほこうそせんを はずかしむなかれ
  • ただみるここん けんたつのものを
  • せいめいりゅうよして こうじんにつとう

字解

  • 儀 狄
    夏(か)の時代はじめて酒を作った人の名で 酒の異名
  • 勇 爲
    勇気をふるって
  • 祖生鞭
    勉励して人と先を争う 先鞭をつける 晉の劉〈王昆〉(りゅうこん)が 友人の祖逖(そてき)が先に任用されたのを聞き 祖生に先に鞭をつけられたといった故事
  • 成 材
    人材を完成させること
  • 保 行
    日常の行いを正しく保つこと
  • 賢達者
    賢人達人 すぐれた人
  • 留 與
    とどめのこす

意解

 男児たる者志を立てるのは青年の時である。たくさんの詩書を読んでつとめて学ばなければならない。
 酒は飲んでも少量にとどめ暴飲してはならない。義をみては勇気を奮い人に先んじてやらなければならない。
 人物の完成には善き師、善き友と親しみ交わる事が大切であり、平生から行いを慎しみ、祖先の名を辱めないようにすることである。
 昔から賢人達人と仰がれる人をみると、その名声を留めて永くこの世に伝えられているではないか。(お前もこのようにして立派な人物になるよう心がけねばならない)

備考

 この詩の構造は平起こり七言律詩の形であって、下平声一先(せん)韻の年、旃、鞭、先、傳の字が使われている。

尾聯 頸聯 頷聯 首聯

作者略伝

丘 濬 1418-1495

 明の儒者・政治家。字は仲深、文莊と諡(おくりな)される。広東省瓊(けい)山の人。父と早く死別し、母が読み書きを教える。景泰5年(1454年)の進士、孝宗の時文渕閣大学士となり政治に参与する。性は廉潔博学であり、晩年は右眼を失明したが読書をたやさず著述も多い。