漢詩紹介
            読み方
- 友人を送る<李 白>
 - 青山 北郭に横たわり
 - 白水 東城を遶る
 - 此の地 一たび別れを爲し
 - 孤蓬 萬里に征く
 - 浮雲 遊子の意
 - 落日 故人の情
 - 手を揮って 茲自り去れば
 - 蕭蕭として 班馬鳴く
 
- ゆうじんをおくる<り はく>
 - せいざん ほっかくによこたわり
 - はくすい とうじょうをめぐる
 - このち ひとたびわかれをなし
 - こほう ばんりにゆく
 - ふうん ゆうしのい
 - らくじつ こじんのじょう
 - てをふるって ここよりされば
 - しょうしょうとして はんばいななく
 
字解
- 
                
- 北 郭
 - 町の北方の外側
 
 - 
                
- 孤 蓬
 - あてのない一人旅
 
 - 
                
- 萬 里
 - きわめて遠い距離
 
 - 
                
- 浮 雲
 - うき雲 空に浮かぶ雲
 
 - 
                
- 遊 子
 - 旅をする人 ここでは友人
 
 - 
                
- 故 人
 - むかしなじみの人 ここでは李白自身
 
 - 
                
- 揮 手
 - 手をふり切って
 
 - 
                
- 班 馬
 - 別れていく馬 「班」は別れる
 
 
意解
 青々とした山は町の北側に横たわり、白く流れる川の水は町の東側を遶っている。
 この地で今君と別れるのだが、君はちょうど風に吹かれて飛んでいく孤独な蓬(よもぎ)のように遠いところへ旅立とうとしている。
 空に浮かぶあの雲は、ひとり旅に出る君の気持のようで、沈もうとしている夕日は、別れを惜しんで悲しんでいる私の気持ちそのものである。
 互いに握り合っていた手を振り切って君はここから去って行こうとすると、別れて行く馬までが、もの悲しそうにいなないているではないか。
備考
 この詩は見送った場所も、友人の名も明らかではない。通常の場合、律詩は頷聯、頸聯を対句にするがこの詩は首聯も対句となっている。「唐詩選」「唐詩三百首」に所収されている。
詩の構造は平起こり五言律詩の形であって、下平声八庚(こう)韻の城、征、情、鳴の字が使われている。
| 尾聯 | 頸聯 | 頷聯 | 首聯 | 
|---|---|---|---|
作者略伝
李白 701-762
盛唐の詩人。杜甫(とほ)と並び称される。蜀(しょく)の錦州彰明県(きんしゅうしょうめいけん)青蓮郷(せいれんきょう)の人で青蓮居士(せいれんこじ)と号した。幼にして俊才、剣術を習い任侠の徒と交わる。長じて中国各地を遍歴し、42歳より44歳まで玄宗(げんそう)皇帝の側近にあり、のち再び各地を転々とし多くの詩をのこす。安禄山(あんろくざん)の乱に遭遇して、罪を得たがのち赦される。62歳病のため没す。