漢詩紹介

読み方

  • 杜少府任に蜀州に之く<王勃>
  • 城闕 三秦を輔とし
  • 風烟 五津を望む
  • 君と 離別の意
  • 同じく是れ 宦遊の人
  • 海内 知己を存し
  • 天涯 比鄰の若し
  • 爲す無かれ 岐路に在りて
  • 兒女と 共に巾を沾すを
  • としょうふにんにしょくしゅうにゆく<おうぼつ>
  • じょうけつ さんしんをほとし
  • ふうえん ごしんをのぞむ
  • きみと りべつのい
  • おなじくこれ かんゆうのひと
  • かいだい ちきをそんし
  • てんがい ひりんのごとし
  • なすなかれ きろにありて
  • じじょと ともにきんをうるおすを

字解

  • 杜少府
    王勃の友人
  • 城 闕
    「闕」は門 ここでは長安の宮殿
  • 三 秦
    現在の陝西省の地 秦(前221~前206)が滅んだ後 項羽は関中(現在の陝西省)の地を雍(よう=西部境) 塞(さい=東部) (てき=北部)の三つに分けて 降伏した秦の将軍たちに統治させた その地を合わせて三秦と呼んだ
  • 五 津
    「津」は渡し場 蜀の地方を流れる長江には五つの大きな渡し場があったので五津と呼ばれた ここでは杜少府の赴任する地
  • 宦遊人
    故郷を離れて官吏となっている人
  • 海 内
    天下
  • 知 己
    自分を理解してくれる友人
  • 比 鄰
    隣近所
  • 岐 路
    分かれ道
  • 沾 巾
    ハンカチをぬらす

意解

 君はこの長安を去って、これより霞がかった渡し場から舟に乗って、はるかな蜀の地に赴任する。
 君と別れる悲しさも、互いに任官の身であれば、離れるのもやむを得ぬ定めであろう。
 天下に自分を理解してくれる友人がいると思えば、たとえ天のはてへ行っても、隣近所にいるようなもの。
 分かれ道に臨んで、婦人や子供のように涙でハンカチをぬらすようなことは、よそうではないか。

備考

 この詩の構造は仄起こり五言律詩の形であって、上平声十一眞(しん)韻の秦、津、人、鄰、巾の字が使われている。五言律詩の一行目は韻を踏まないのが普通であるが同韻の秦の字が使われている。「唐詩選」「唐詩三百首」に所収されている。

尾聯 頸聯 頷聯 首聯

作者略伝

王 勃 649-676

 初唐の詩人。字は子安(しあん)、父は王福畤(おうふくじ)、祖父は王通(おうつう)といい学者の家の出である。山西省河津(かしん)県絳州(こうしゅう)龍門の人。幼時より詩文にすぐれ、20歳前に高宗の試問に応じ朝散郎(ちょうさんろう)の官をさずけられ、沛王府(はいおうふ)の修撰(しゅうせん)という職についた。のち高宗の怒りを買い蜀の国に流謫(るたく)される。父の王福畤も同時に交趾(こうち=今の北ベトナム)令(れい)に左遷された。王勃は大赦(たいしゃ)で出獄し、父を尋ねて南方に旅立ち、南海に落ちて死んだ。年28。

参考

 帝王の呼び名(主として唐王朝)
 高祖又は太祖……第一代帝王
 漢の高祖は劉邦 唐の高祖は李淵
太宗………………第二代帝王
 唐の太宗は李世民
 高宗………………第三代帝王
 中宗………………第四代帝王