漢詩紹介

読み方
- 代悲白頭翁(3-2)<劉廷芝>
- 古人復無し 洛城の東
- 今人還對す 落花の風
- 年年歳歳 花相似たり
- 歳歳年年 人同じからず
- 言を寄す 全盛の 紅顔子
- 應に憐れむべし 半死 白頭の翁
- 此の翁の白頭 眞に憐れむ可し
- 伊れ昔は紅顔の 美少年
- だいひはくとうおう<りゅうていし>
- こじんまたなし らくじょうのひがし
- こんじんまたたいす らっかのかぜ
- ねんねんさいさい はなあいにたり
- さいさいねんねん ひとおなじからず
- げんをよす ぜんせいの こうがんし
- まさにあわれむべし はんし はくとうのおきな
- このおうのはくとう しんにあわれむべし
- これむかしはこうがんの びしょうねん
字解
-
- 寄 言
- 呼びかけのことば 申しあげたい
意解
昔の人は洛陽の東の春景色を再び見ることはないが、今の人も昔の人と同じように、花を吹き散らす風に向かい合っている。
毎年毎年花は同じように咲くが、年々それを見る人は同じではない。
だから申し上げたい。今を盛りの紅顔の美少年達よ、半ば死にかけている白髪の老人を憐れと思いたまえ。
この老人の白髪頭は誠に憐れむべきだが、これでも昔は紅顔の美少年であったのだ。
備考
この詩の題は「代白頭吟」とするものもある。「公子行」とともに「唐詩選」に所収されている。
詩の構造は七言古詩の形で韻は次の通りである。
第1・2句 下平声六麻(ま)韻の花、家
第3・4句 入声十三職(しょく)韻の色、息
第5~8句 上声十賄(かい)韻の改、在、海
第9~14句 上平声一東(とう)韻の東、風、同、翁
第15~22句 下平声一先(せん)韻の憐、年、前、仙、邊
第23~26句 上平声四支(し)韻の時、絲、悲
の字が使われている。古詩のため平仄は論じない。
作者略伝
劉廷芝 651-678?
初唐の詩人。名は希夷(きい)、字は廷芝。臨汝(りんじょ=河南省汝州県)の人とも穎州(えいしゅう=安徽省阜陽市)の人ともいう。上元2年(675)宋之問(そうしもん)や沈栓期(しんせんき)と同時に進士に及第したが素行悪く終生官位につけなかった。美男子で琵琶の名手であったといわれる。
参考
「年年歳歳…歳歳年年…」の伝説
劉廷芝はこの詩ができた時、不吉だと思ったが、案の定1年たたないうちに殺されたと『唐詩紀事』にある。また彼は宋之問の女婿で、この詩を宋之問にみせたところ大変感心し自分に譲ってくれと頼んだ。劉廷芝が断ると下男に命じて劉廷芝を殺させたと『唐才子伝』にある。