漢詩紹介

吟者:稲田 菖胤
2010年3月掲載
読み方
- 古稀偶感(其の一)<宮崎東明>
- 年年善友を増し
- 日日清吟を樂しむ
- 有始有終の美
- 無塵無俗の心
- こきぐうかんそのいち<みやざきとうめい>
- ねんねんぜんゆうをまし
- にちにちせいぎんをたのしむ
- ゆうしゆうしゅうのび
- むじんむぞくのこころ
詩の意味
毎年、善い友人を増やし、毎日のように詩を作って楽しみ、静かに吟じ続ける。
始めから終わりまで、生涯一貫して常に美しい心を持ち、汚れもせず、世間に染められもせず、清らかな心を持ち続けたい。
鑑賞
古稀を迎えた作者の晩年の心境
この詩は宮崎東明先生が昭和32年、古稀を迎えられた時の作で、晩年の心境が述べられています。
古稀とは70歳のことで、杜甫の「曲江(きょくこう)」という詩があり、その中の「人生七十古来稀なり」という名句から、古稀という言葉が広く使われるようになりました。
語句の意味
-
- 古 稀
- 70歳
-
- 清 吟
- 静かに吟じ また詩を作ること
-
- 無塵無俗心
- 清らかな心 汚れた世の中に心を染めないこと
詩の形
平起こり五言絶句の形であって、下平声十二侵(しん)韻の吟、心の字が使われている。起句と承句、転句と結句が対句なっていて、全対格と呼び、絶句としてはめずらしい形となっている。
結句 | 転句 | 承句 | 起句 |
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作者略伝
宮崎東明 1889-1969
明治から昭和の医師・吟詠家・漢詩人。本会の第二代目会長
大阪府大東市野崎の名家に生まれた。大正6年大阪市福島区で胃腸科医院を開業するかたわら、書・詩・画・篆刻・吟詠などの道も極めた多才の人。昭和9年発起人となり関西大学教授藤沢黄坡を会長に戴き、関西吟詩同好会(現在の関西吟詩文化協会)を創設した。昭和23年に二代目会長となり、戦後の吟界を復興させ、さらに発展させた。我が国の吟界の大功労者である。昭和44年没す。享年81歳。