漢詩紹介

吟者:中谷淞苑
2011年1月掲載[吟法改定再録]

読み方

  • 結婚を賀す<松口月城>
  • 婦と為り夫と為るは 惟宿縁
  • 同心一体 天に乖かず
  • 人生の行路 豈容易ならんや
  • 永久に違う勿れ 貞と賢と
  • けっこんをがす<まつぐちげつじょう>
  • つまとなりおっととなるは これしゅくえん
  • どうしんいったい てんにそむかず
  • じんせいのこうろ あによういならんや
  • とわにたごうなかれ ていとけんと

詩の意味

 数多い人の中から、夫婦になるということは、前世からの約束ごとである。ひとたび夫婦になった以上、身も心も一体となって、天意に反しない正しい道を進まなければならない。
 しかし、人生の歩む道は、なかなか厳しく、またけわしいものである。だからいついつまでも、妻は貞節を守り、夫は賢明に学問や業を習い修めることを目指し、末永く助け合って暮らしていかなければならない。

鑑賞

 結婚する夫婦への教訓の詩

結婚して新しい前途に向かう、妻となり夫となる者への教訓の詩です。

語句の意味

  • 宿 縁
    さきの世からの因縁 前世の約束
  • 不 乖
    背かない
  • 人生行路
    人間の生きてゆく道 世わたり
  • 豈容易
    たやすいことではない
  • 女は操を守る
  • 男は賢明である

参考

結婚記念日の名称一覧

 1年目・紙婚式、5年目・木婚式、10年目・錫婚式、15年目・水晶婚式、20年目・磁器婚式、25年目・銀婚式、30年目・真珠婚式、35年目・ヒスイ婚式(サンゴ婚式)、40年目・ルビー婚式、45年目・サファイア婚式、50年目・金婚式、55年目・エメラルド婚式、60年目・ダイヤモンド婚式

詩の形

 仄起こり七言絶句の形であって、下平声一先(せん)韻の縁、天、賢の字が使われている。

結句 転句 承句 起句

作者略伝

松口月城 1887-1981
明治から昭和の医師・吟詠家・漢詩人・書家

 福岡市有田に生まれる。14歳で松口家の養子となる。18歳で医師の資格を得、世人を驚かせた秀才である。医業のかたわら漢詩・書・画の道にも優れ、多くの作品は今もなお「松口月城記念館」に展示されている。全国規模の詩吟連盟の役員を長く歴任され、昭和49年に吟詠普及振興に尽くした功績により文部大臣表彰を受けた。本会の顧問も長く務められた。享年95歳。