漢詩紹介

読み方

  • 親を夢む<細井平洲>
  • 芳草萋萋として 日日新たなり
  • 人を動かして歸思 春に勝えず
  • 郷關此を去る 三千里
  • 昨夢高堂 老親に謁す
  • おやをゆめむ<ほそいへいしゅう>
  • ほうそうせいせいとして にちにちあらたなり
  • ひとをうごかしてきし はるにたえず
  • きょうかんここをさる さんぜんり
  • さくむこうどう ろうしんにえっす

字解

  • 芳 草
    香のよい草
  • 萋 萋
    草のしげったさま
  • 歸 思
    帰心 故郷へ帰りたいと思うこころ
  • 不勝春
    春の物思いにたえられない
  • 高 堂
    りっぱな家の意であるが 父母の住居を敬っていった

意解

 芳しい草が勢いよく伸び一日一日と成長してゆく様子は、人の心を動かし家に帰りたい気持ちが起こって、春の物思いにたえられず、いてもたってもおられない。
 郷里は遥かに遠く帰ることも出来ない。昨夜夢で年老いた両親に会って元気な姿を見ることが出来、嬉しいことだった。

備考

 長崎留学中故郷の両親を思い夢に両親に会って作る。この詩の構造は仄起こり七言絶句の形であって、上平声十一眞(しん)韻の新、春、親の字が使われている。

結句 転句 承句 起句

作者略伝

細井平洲 1728-1801

 江戸中期の儒者。尾張(愛知県)知多郡平洲(ひらしま)村の出身。姓はもと紀(き)と称し紀平洲(きのへいしゅう)ともよばる。名は徳民(とくみん)、字は世馨(せいけい)、通称甚三郎、平洲または如来(にょらい)山人と号す。はじめ中西淡渕に学びのち長崎に出て華音(かおん 中国語)を習うこと三年、母の病により帰郷。24歳名古屋で塾を開いたが、間もなく江戸に出る。師淡渕(たんえん)の歿後、叢桂(そうけい)社の門弟も引取り名声一時に上がる。尾州侯の儒官となり米沢藩上杉鷹山(ようざん)藩主の賓師(ひんし)ともなる。
人となり風流温雅度量にとみ、小事に拘泥(こうでい)せず、享和元年(1801)6月江戸尾州藩邸において没す、年74。