漢詩紹介

CD④収録 吟者:熊谷峰龍
2016年8月掲載

読み方

  • 佳賓好主<佐藤一斎>
  • 月は梅花を訪うて 好主と爲し
  • 梅は月影を邀えて 佳賓と作す
  • 佳賓好主 兩つながら雙絶
  • 管領す黄昏 一刻の春
  • かひんこうしゅ<さとういっさい>
  • つきはばいかをとうて こうしゅとなし
  • うめはげつえいをむかえて かひんとなす
  • かひんこうしゅ ふたつながらそうぜつ
  • かんりょうすこうこん いっこくのはる

字解

  • 佳賓好主
    佳い賓客(ひんかく おきゃく)と好い主人
  • 月 影
    月の光
  • まちうける むかえる
  • 雙 絶
    好一対のすぐれた風景
  • 管 領
    支配する 自分のものとする
  • 黄 昏
    ゆうぐれ、たそがれ

意解

 月は美しく咲く梅の花を訪(おとず)れて(照らして)とても良い主人だとし、梅の花は月影をむかえてとても良い客だとする。
 佳(よ)い客と好い主人(月と梅)は好一対のすぐれた風景をもたらし、春の夕暮れの一時(ひととき)をわがものとしているのである。

備考

 この詩の構造は仄起こり七言絶句の形であって、上平声十一眞(しん)韻の賓、春の字が使われている。起句は踏み落とし、起・承句は対句で、特に同字を意識的に使っている。

結句 転句 承句 起句

作者略伝

佐藤一斎 1772-1859

 江戸後期の儒学者。安永元年10月江戸浜町(はまちょう)の美濃(みの)岩村藩邸に生まれる。名は坦(たん たいら)、字は大道(たいどう)、捨蔵(すてぞう)と称し、号は一齋。中井竹山その他に学び、晩年昌平黌(しょうへいこう)の儒官となり、安政6年9月没す。年88。麻生深広寺(あさぶしんこうじ)に葬る。