漢詩紹介

読み方

  • 無題<阿倍仲麻呂>
  • 義を慕う 名空しく在り
  • 忠を輸すも 孝全からず
  • 恩に報ゆるに 幾日も無し
  • 國に歸るは 定めて何れの年ぞ
  • むだい<あべのなかまろ>
  • ぎをしとう なむなしくあり
  • ちゅうをいたすも こうまったからず
  • おんにむくゆるに いくにちもなし
  • くににかえるは さだめていずれのとしぞ

字解

  • 人としてふみ行うべき道
  • 真心を持って人に尽くす
  • いったい 果たして

意解

 人のふみ行うべき道を求めて励んできたが、空しい名声だけがあるばかり。日本を離れ、唐の国に来ているのは、祖国に忠を尽くすことになるが、親に孝を尽くすことは出来ない。
 この先、恩に報いたくても老いてきた今、もうあと何日もなくなってしまった。果たして日本へ帰国できるのはいつであろうか。

備考

 この詩の構造は、仄起こり五言絶句の形であって、下平声一先(せん)韻の全、年の字が使われている。

結句 転句 承句 起句

作者略伝

阿倍仲麻呂 701-770

 奈良時代の遣唐留学生。霊亀2年(716)16歳で選ばれて翌、養老元年(717)吉備真備(きびのまきび)らと共に唐に留学。名を朝衡(ちょうこう)と改め、玄宗皇帝に仕えた。博学多才。
皇帝に寵遇(ちょうぐう)され、李白、王維など著名文人と交際し文名があった。のち海難に帰国をはばまれて果たさず在唐50余年。その間、節度使として安南に赴き治績をあげた。宝亀元年(唐の大暦5年)唐で没す。年69。「天の原」(D四号)の歌は有名。