漢詩紹介

読み方

  • 明妃の曲<高野蘭亭>
  • 邊關萬里 白楡の秋
  • 窈窕たる雲鬟 獨り自ら愁う
  • 一曲の琵琶 猶未だ畢らず
  • 風沙吹き上る 玉掻頭
  • めいひのきょく<たかのらんてい>
  • へんかんばんり はくゆのあき
  • ようちょうたるうんかん ひとりみずからうれう
  • いっきょくのびわ なおいまだおわらず
  • ふうさふきのぼる ぎょくそうとう

字解

  • 明 妃
    王昭君
  • 邊 關
    辺塞(へんさい)の関所
  • 白 楡
    白い楡(にれ)の木
  • 窈 窕
    奥ゆかしく美しい
  • 雲 鬟
    雲のように豊かな美しい髪 「鬟」は束ねて丸くした髪形
  • 風 沙
    風に舞う砂漠の砂
  • 玉掻頭
    玉の簪(かんざし)

意解

 万里も隔たった匈奴(きょうど)の辺塞の地で、白い楡の木が落葉する秋、奥ゆかしく美しくそして豊かな髪をした明妃は一人で愁いに沈んでいる。
 この悲しみを琵琶の一曲を弾いて慰めようとするが、それをまだ弾き終わらないうちに風沙が吹きあがって美しい玉の簪を汚すのである。

備考

 この詩は前漢の十代皇帝元帝の宮女である明妃つまり王昭君が匈奴の王による屈辱的な要求のため、側室とならざるを得なかった、憐れむべき境遇を、作者が追慕したものである。詩の構造は平起こり七言絶句の形であって、下平声十一尤(ゆう)韻の秋、愁、頭の字が使われている。「蘭亭遺稿」に所収されている。

結句 転句 承句 起句

作者略伝

高野 蘭亭 1704-1757

 江戸中期の儒者。名は惟馨(いけい)、字は子式(ししき)、蘭亭または東里と号す。江戸の人。荻生徂徠(おぎゅうそらい)の門に入り、学識は抜群であったが、17歳のとき失明。徂徠の助言に従って漢詩を志した。晩年鎌倉円覚寺のそばに庵を作り死所としたが、宝暦7年江戸において没す。年54。詩作万首に及ぶ。