漢詩紹介

読み方

  • 落花<徳富蘇峰>
  • 蝶は舞い蜂は歌う 到る處宜し
  • 香雲漠漠たり 草離離たり
  • 早春何ぞ若かん 晩春の好きに
  • 滿袖の輕風 花落つるの時
  • らっか<とくとみそほう>
  • ちょうはまいはちはうとう(オ) いたるところよろし
  • こううんばくばくたり くさりりたり
  • そうしゅんなんぞしかん ばんしゅんのよきに
  • まんしゅうのけいふう はなおつるのとき

字解

  • 香 雲
    群がり咲く桜
  • 漠 漠
    一面に広がるさま
  • 離 離
    草が並び連なる姿
  • 何 若
    どうして…に及ぶだろうか(いや到底及ばない)
  • 滿 袖
    袖いっぱい

意解

 蝶が舞っているように飛び交い、蜂は歌っているように飛んで、どこへ行ってもよい光景である。桜の花が群がって咲き、草も青々とずっと並び連なっている。
 春の初めは春の終わりの景にどうして及ぶだろうか、到底及ばないだろう。袖いっぱいに軽やかな風を受けて花の散る情景はすばらしい。

備考

 この詩は落花に寄せて、晩春の良さを詠じている。早春の喜びを詠うものは多いが、晩春には早春に勝るものがあると述べている。詩の構造は七言絶句の形であって、上平声四支(し)韻の宜、離、時の字が使われている。

結句 転句 承句 起句

作者略伝

徳富蘇峰 1863-1957

 明治、大正、昭和の評論家、歴史家、漢詩人として有名である。熊本県水俣の出身。名は正敬(まさたか)、通称猪一郎(いいちろう)、蘇峰は号。家は代々庄屋兼代官をつとめた。幼いときから熊本洋学校で学んで、のち同志社に移った。その後上京して出版社を興し「国民新聞」を発行した。「近世日本国民史」は後年の作である。昭和32年没す。年94。