漢詩紹介

読み方

  • 彦山<廣瀬淡窓>
  • 彦山高き處 望氤氳
  • 木末樓臺 晴れて始めて分かる
  • 日暮天壇 人去り盡くし
  • 香煙散じて 數峰の雲と作る
  • ひこさん<ひろせたんそう>
  • ひこさんたかきところ のぞみいんうん
  • ぼくまつろうだい はれてはじめてわかる
  • にちぼてんだん ひとさりつくし
  • こうえんさんじて すうほうのくもとなる

字解

  • 彦 山
    英彦山(ひこさん=海抜1200メートル)の古名 福岡県田川郡添田(そえだ)町と大分県下毛(しもげ)郡山国 (やまくに)町との境にそびえる霊山で 北岳 中岳 南岳からなる
  • 氤 氳
    雲霧が立ちこめているさま
  • 樓 臺
    高い建物 中岳にある彦山神社の社殿をいう
  • 天 壇
    元来は中国で天子が天をまつる祭壇のこと ここでは彦山上宮の拝殿をいう

意解

 ここ彦山の山頂のあたりは、どちらを眺めても雲霧が立ちこめて何一つ見えなかったが、やがて日が昇るにつれて、やっと木々のこずえと権現の 高い本殿とがはっきり見分けられるようになった。先ほどまで多くの参詣者たちが集まっていた拝殿から、日暮れとともに人影は去り以前の静寂に もどった時、今までもうもうと立ちのぼっていた護摩や香の煙が、三つの峰に分かれ雲となって漂っているように見える。

備考

 この詩の構造は平起こり七言絶句の形であって、上平声十二文(ぶん)の氳、分、雲の字が使われている。

作者略伝

廣瀬 淡窓 1782-1856

 天明2年豊後(ぶんご=大分県)日田(ひた)に生まれる。名は建(けん)、字は子基(しき)、淡窓と号す。天資温厚、学を好み、松下筑陰 (まつしたちくいん)に師事、12歳にして七言律を賦す。のち亀井南溟(かめいなんめい)に学び、日田に帰り塾を開き桂林荘(けいりんそう)と称し、多数の 門弟を教育する。安政3年11月没す。年75。正五位を贈られる。「遠思楼詩鈔」(えんしろうししょう)「淡窓詩話」(たんそうしわ)などの著書がある。