漢詩紹介
読み方
- 月下懷い有り<宮崎東明>
- 田園露白く 雨晴るるの天
- 月を愛して三更 尚未だ眠らず
- 歳歳同じく望む 明鏡の影
- 唯憐れむ世事の 時と與に遷るを
- げっかおもいあり<みやざきとうめい>
- でんえんつゆしろく あめはるるのてん
- つきをあいしてさんこう なおいまだねむらず
- さいさいおなじくのぞむ めいきょうのかげ
- ただあわれむせじの ときとともにうつるを
字解
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- 明 鏡
- くもりのない鏡 すみきった心 ここでは月のことをさす
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- 三 更
- 夜の12時前後のこと 真夜中のこと
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- 世 事
- 世の中のこと
意解
夜になって雨もあがり田園一面に露が白く月の光に輝いている。皎々(こうこう)と中天にかかる月を眺めながら、とめどもなくいろいろと物思いに耽(ふけ)っていると夜は静かにふけていく。
年々(ねんねん)仰ぎ見る月の姿はかわらないが、人の世の事は刻一刻と移りかわって行くのは何と気の毒であわれなことであろうか。
備考
この詩の構造は平起こり七言絶句の形であって、下平声一先(せん)韻の天、眠、遷の字が使われている。
結句 | 転句 | 承句 | 起句 |
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作者略伝
宮崎東明 1889-1969
名は喜太郎、東明は号。明治22年3月河内国四条村野崎(現在の大東市)に生まれる。京都府立医学専門学校を卒業、大阪玉川町に医院を開く。医業のかたわら詩を藤澤黄坡(ふじさわこうは)、書を臼田岳洲(うすだがくしゅう)、画を中国人方洺(ほうめい)、篆刻(てんこく)を高畑翠石(たかはたすいせき)、吟詩を眞子西洲(まなごさいしゅう)の各先生に学び、その居を五楽庵と称した。昭和23年公益社団法人関西吟詩文化協会の前身・関西吟詩同好会、藤澤黄坡初代会長没後二代目会長に就任。昭和44年9月18日没す。年82。