漢詩紹介

読み方
- 岐阜竹枝<森春濤>
- 郭を環って皆山 紫翠堆し
- 夕陽人は倚る 好樓臺
- 香魚上らんと欲して 桃花落ち
- 三十六灣 春水來る
- ぎふちくし<もりしゅんとう>
- かくをめぐってみなやま しすいうずたかし
- せきようひとはよる こうろうだい
- こうぎょのぼらんとほっして とうかおち
- さんじゅうろくわん しゅんすいきたる
字解
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- 岐阜竹枝
- 岐阜の風色 竹枝とはその土地の風土 人情 風俗等を詠ずる詩体をいう
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- 紫 翠
- 山の景色の美しい形容
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- 好樓臺
- 美しい高どの
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- 香 魚
- 鮎のこと
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- 三十六灣
- 三十六は多いことをいい ここは長良川をさす 湾は水曲 水の弓状に入りこんだところ
意解
岐阜のまちをとりかこむ金華山(きんかざん)やその他の山々は紫翠に満ち美しい風景をくりひろげていみる眺望は一段とよい。
時まさに桃花散り盡くして長良川には春水が満ち満ちて、名物の鮎も上がらんとする好時節になった。
備考
この詩の構造は仄(かい)起こり七言絶句の形であって、上平声十仄韻の堆、臺、來の字が使われている。
結句 | 転句 | 承句 | 起句 |
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作者略伝
森 春濤 1819-1889
幕末、明治の漢詩人。名は魯直(ろちょく)、字は希黄(きおう)、通称浩甫(こうほ)、春濤は号。尾張(愛知県)一宮の人。代々医を業とす。15歳にして漢詩を作る。鷲津益斎(わしずえきさい)に学び嘉永3年京都に出て梁川星巌に学ぶ、のち江戸に出て、知名の人と交わる。明治7年再び江戸に出て茉莉(まつり)吟社を起こし、明治漢詩壇に君臨する。明治21年没す。年71。