漢詩紹介

読み方

  • 野口英世(6-3)<松口月城>
  • 一千九百 十三年
  • 萬有科學の 大總會
  • 世界の耆碩 輸贏を競う
  • 君壇上に立ちて 意氣大なり
  • 前人未發の 大業蹟
  • 滿堂の學者 肅として聲無し
  • 獨帝手を握って 功業を讃う
  • 日東の男兒 餘榮有り
  • のぐちえいせい<まつぐちげつじょう>
  • いっせんきゅうひゃく じゅうさんねん
  • ばんゆうかがくの だいそうかい
  • せかいのきせき しゅえいをきそう
  • きみだんじょうにたちて いきだいなり
  • ぜんじんみはつの だいぎょうせき
  • まんどうのがくしゃ しゅくとしてこえなし
  • どくていてをにぎって こうぎょうをたとう
  • にっとうのだんじ よえいあり

字解

  • 耆 碩
    学徳の優れた人 「耆」は老人 「碩」は大きい
  • 輸 贏
    優秀
  • 餘 榮
    身に余る栄誉

意解

 1913年に万有科学の大総会が開催された。
 世界の大学者が研究の優劣を競う中で、英世は壇上に立ち、大いに意気を吐いた。
 その研究は前人がまだ誰も発表したことのない大業績で、会場すべての学者は静まりかえり、感動のあまり声も出なかった。
 ドイツ皇帝カイゼルは握手を求め彼の業績を称え、日本男児の英世は余りある栄誉を受けた。

備考

 この詩の構造は七言古詩の形であって、韻は次の通りである。
  第2・4句   下平声八庚(こう)韻の平、生
  第6・8句   上平声四支(し)韻の資、絲
  第10・12句 上平声十一眞(しん)韻の諄、人
  第13~16句 下平声十一尤(ゆう)韻の休、洲、秋
  第18・20句 去声九泰(たい)韻の會、大
  第22・24句 下平声八庚(こう)韻の聲、榮
  第26・28句 上平声四支(し)韻の姿、離
  第30・32句 下平声八庚(こう)韻の情、聲
  第34・36句 入声九屑(せつ)韻の烈、傑
  第37~40句 下平声八庚(こう)韻の驚、征、牲
  第42・44句 上平声十一眞(しん)韻の濱、人
 の字が使われている。

作者略伝

松口月城 1887-1981

 名は榮太(えいた)、号は月城。明治20年福岡市有田に生まれる。熊本医学専門学校を卒業し、18歳にして医師となり世人を驚かせた秀才である。医業のかたわら漢詩を宮崎来城に学び、詩、書画、共に巧みであった。なお本会顧問を永年つとめられる。昭和56年7月16日没す。年95。