漢詩紹介

読み方

  • 野口英世(6-6)<松口月城>
  • 悲雨慘風 亞倉港
  • 英雄骨を埋む 蠻土の濱
  • 彼は人類のために生まれ
  • 人類の爲に死せり(墓銘)
  • 彼は人類のために生まれ
  • 人類の爲に死せり(墓銘)
  • 哀惜之聲は 世界に滿つ
  • 眞に是 空前 絶後の人
  • 眞に是 空前 絶後の人
  • のぐちえいせい<まつぐちげつじょう>
  • ひうざんぷう あくらこう
  • えいゆうほねをうずむ ばんどのひん
  • かれはじんるいのためにうまれ
  • じんるいのためにしせり(ぼめい)
  • かれはじんるいのためにうまれ
  • じんるいのためにしせり(ぼめい)
  • あいせきのこえは せかいにみつ
  • しんにこれ くうぜん ぜつごのひと
  • しんにこれ くうぜん ぜつごのひと

字解

  • 蠻 土
    未開の土地 アフリカの土地
  • 彼は人類の……
    ニューヨーク郊外のブロンスク区にある英世の墓碑に刻まれた銘の日本語訳

意解

 彼の死を悼むような悲惨な雨や風がすさぶ中で、英雄は未開の地アクラで亡くなった。
 彼は人類のために生まれ、人類のために死去した。
 彼の死を哀しみ惜しむ声は世界中に満ちた。この人こそまさに空前絶後の偉大な人物である。

備考

 この詩の構造は七言古詩の形であって、韻は次の通りである。
  第2・4句   下平声八庚(こう)韻の平、生
  第6・8句   上平声四支(し)韻の資、絲
  第10・12句 上平声十一眞(しん)韻の諄、人
  第13~16句 下平声十一尤(ゆう)韻の休、洲、秋
  第18・20句 去声九泰(たい)韻の會、大
  第22・24句 下平声八庚(こう)韻の聲、榮
  第26・28句 上平声四支(し)韻の姿、離
  第30・32句 下平声八庚(こう)韻の情、聲
  第34・36句 入声九屑(せつ)韻の烈、傑
  第37~40句 下平声八庚(こう)韻の驚、征、牲
  第42・44句 上平声十一眞(しん)韻の濱、人
 の字が使われている。

作者略伝

松口月城 1887-1981

 名は榮太(えいた)、号は月城。明治20年福岡市有田に生まれる。熊本医学専門学校を卒業し、18歳にして医師となり世人を驚かせた秀才である。医業のかたわら漢詩を宮崎来城に学び、詩、書画、共に巧みであった。なお本会顧問を永年つとめられる。昭和56年7月16日没す。年95。