詩歌紹介

CD③収録 吟者:曾根鷺夕
2015年7月掲載
読み方
- さしのぼる<明治天皇御製>
- さしのぼる 朝日の如く さわやかに
- もた まほしきは 心なりけり
- さしのぼる<めいじてんのうぎょせい>
- さしのぼる あさひのごとく さわやかに
- もた まほしきは こころなりけり
語意
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- さしのぼる
- さしのぼってくる 昇天の勢いと解するのは「さし」のニ音が直線的一定方向に運動する意味をもつからである
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- もたまほしき
- 「もた」は「持つ」の未然形(みぜんけい)であり「まほしき」は希望を表す助動詞「まほし」の連体形である 全体で「持ちたいと思う」
歌意
黎明(れいめい)の横雲を破って東の空に、赤々と一直線に昇ってくる朝日のように、さわやかな気分を常に持ちたいものである。
出典
明治42年歌御会始御題「日」
作者略伝
明治天皇 1852─1912
嘉永5年-明治45年、孝明天皇の第二皇子で第122代の天皇。御名は睦仁(むつひと)。慶応3年(1867)16歳で即位せられ、翌年3月五箇条の誓文を神に誓われ、一世一元制を定める。幕末の鎖国的対外政策を改め、京都から江戸(東京)に遷都し江戸城を皇居とされた。版籍奉還・廃藩置県・廃刀令・徴兵令・義務教育制度・内閣制度設置・さらに大日本帝国憲法制定等数多くの旧体を改革。日清・日露戦争など日本史上かつてない激動期の天皇として在位。多くの御製がある。明治45年7月30日崩御。年61。
備考
佐々木信綱は、大正12年(1923)の謹注に「進取発展の気象を持たまほしく思ふと宣(のたま)へり」と記している。ま た御歌会始は宮中における新年の儀式の一つで、古くは毎年の定めではなかった。明治2年(1869)から毎年1月に催され、天皇、皇后がご臨席 、国民の詠進歌のうち秀逸を選んで披露するようになった。