詩歌紹介

CD③収録 吟者:奥山紅雋
2015年8月掲載
読み方
- くれないの<正岡子規>
- くれないの 二尺伸びたる 薔薇の芽の
- 針やはらかに 春雨の降る
- くれないの<まさおかしき>
- くれないの にしゃくのびたる ばらのめの
- はりやわらかに はるさめのふる
語意
-
- くれないの
- バラの若芽が赤味を帯びている
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- 伸びたる
- 「たる」は助動詞 動作の継続を表し「~している」
-
- 針やわらかに
- 「針」はバラのとげの意で 伸びた新芽の柔らかいとげ
歌意
赤くバラの芽が二尺ほどのび、新芽の針がまだやわらかく、それに絹のような春雨が降っている。
出典
「竹の里歌(さとうた)」
作者略伝
正岡子規 1867ー1902
慶応3年ー明治35年。愛媛県松山に生まれた。本名常規(つねのり)。号は獺祭書屋(だっさいしょおく)主人・竹の里人(さとひと)。俳人であり歌人。
明治16年大学予備門に入り、23年東大国文科入学。盛んに句作し、25年落第して退学。日本新聞社に入社。この新聞「日本」への投稿によって、子規は俳句と短歌の革新運動を展開した。子規一派の俳句が「日本派」とよばれたのは、これに由来する。著書「仰臥(ぎょうが)漫録」「病牀六尺」など名作集を残し明治35年没。年36。
備考
「竹の里歌」は子規の歌集で、死後伊藤左千夫らによって編集された。この歌は死の2年前の作で「庭前即景」十首中の第三首 である。外出もできない体で、病床から見られる庭の草木や鳥などをたんねんに写生した子規らしい歌である。