詩歌紹介

春日野の   武田勝頼

CD③収録 吟者:川村 朋映
2015年8月掲載

読み方

  •  春日野の <武田 勝頼>
  • 春日野の 雪もいつしか 消えぬれば
  • むらむら生うる 春の若草
  •  かすがのの <たけだ かつより>
  • かすがのの ゆきもいつしか きえぬれば
  • むらむらおうる はるのわかくさ

語意

  • 春日野
    上越市の春日山麓一帯をいう
  • いつしか
    何時しか いつのまにか知らぬまに「し」は意を強め「か」は疑問を表す助詞
  • むらむら
    そこここに群がっているさま

歌意

 春日山麓(かすがさんろく)の雪も、いつしか消え去った事であろうから、もう春日野一帯は、春の若草がむらがり生い出でたことだろう。

作者略伝

武田勝頼 1546~1582

  室町時代の甲斐(かい)の戦国大名

 晴信(はるのぶ=信玄)の第4子。天正元年(1573)父の急死により家督を継いだが、版図(はんと=領土)は拡大し、重臣達の確執が生じ、隙をついて徳川家康が進出するなど、難問を抱えた出発であった。翌年から反撃に出たが、長篠(ながしの)の戦で大敗した。軍役体制の再編強化を進め織田信長に対抗したが、父の代とは異なり、既にに畿内の権力基盤を確立した織田信長と、徳川氏に敵す術(すべ)もなく、天正9年(1581)新府(今の山梨県韮崎=にらざき=市)築城を軸とする防備体制も実を結ばず、天目(てんもく)山麓(山梨県大和村)に自刃し、武田氏は滅亡した。享年37。