詩歌紹介

吟者:大取 鷲照
2018年1月掲載
読み方
- おほてらの<会津八一>
- おほてらの まろきはしらの つきかげを
- つちにふみつつ ものをこそおもへ
- おおてらの<あいづやいち>
- おおてらの まろきはしらの つきかげを
- つちにふみつつ ものをこそおもえ
語意
-
- おほてら
- 大寺(おおてら) 唐招提寺をいう
歌意
大寺の金堂に降りそそぐ明月の光は、ふき放しの柱の列の力強い影を生じ、その影は石畳の上におちている。それを踏みながら私は鑑真(がんじん)のことや遣唐使のことなど、懐古の情に耽ったことだ。
出典
「鹿鳴集(ろくめいしゅう)」
作者略伝
会津八一 1881-1956
明治14年ー昭和31年。歌人・美術史家。号は秋艸道人(しゅうそうどうじん)。奈良の古美術を題材にし、ひらがな書きを主にした万葉調の歌に特色がある。新潟県生まれ。早稲田大学英文科卒。母校で東洋美術を教え美術史研究家としても有名。正岡子規と親交があったが、どの結社にも属せず、自由に作歌を発表した。「鹿鳴集」「南京新唱(なんきょうしんしょう)」などが代表的歌集。
良寛の紹介者として知られ、また、良寛の文字にならった文人風の書をよくした書家でもある。
晩年「夕刊ニイガタ」を創刊。新潟市名誉市民。生涯独身を通したという。年75。
備考
この歌は唐招提寺の金堂を詠んでいる。この寺は中国僧鑑真が建立した律宗の総本山で、その金堂の正面の8本の柱の間 隔は中央部がやや広めであり、しかも吹き放ちであることや、中央部分にふくらみがあることからギリシャ神殿の影響を説くこともある。作者 八一は鑑真の西洋と中国と日本に通じた思想の深さに思いを致したのである。