詩歌紹介

吟者:池田菖黎
2021年8月掲載

読み方

  • 海恋し<与謝野晶子>
  • 海恋し 潮の遠鳴り 数へては
  • 少女となりし 父母の家
  • うみこいし<よさのあきこ>
  • うみこいし しおのとおなり かぞえては
  • おとめとなりし ちちははのいえ

語意

  • 潮の遠鳴り
    遠くから聞こえてくる打ちよせる波の音
  • 父母の家
    ここでは生家

歌意

 ふるさとの海の恋しさなつかしさ。遠くから聞こえてくる打ちよせる波の音を数えて育った少女の頃や、生家が思い出され無性に恋しくなるのである。

出典

 「恋衣」

作者略伝

与謝野晶子 1878-1942

明治11年ー昭和17年。歌人、作家、思想家。
 大阪府堺市甲斐町一丁で、老舗和菓子屋の三女として生まれた。長じて、明治34年に東京に出た。夫は与謝野鉄幹。代表作に、歌集「みだれ髪」、日露戦争に出征の弟を思う詩「君死にたまふことなかれ」がある。
 残した短歌5万首、「源氏物語」の現代語訳「新訳源氏物語」。女性解放思想家としての足跡も大きい。昭和17年5月29日没す。年64。

備考

 「恋衣」は1905年、明治38年発行された詩歌集である。この詩歌集は、与謝野晶子「曙染(あけぼのぞめ)」短歌148首、詩6編、山川登美子「白百合」短歌131首、増田雅子「みをつくし」短歌114首の共著である。