詩歌紹介

CD⑤収録 吟者:奥山紅雋
2018年6月掲載
読み方
- 銀も<山上憶良>
- 銀も 金も玉も なにせむに
- まされる宝 子にしかめやも
- しろがねも<やまのうえのおくら>
- しろがねも くがねもたまも なにせんに
- まされるたから こにしかめやも
語意
-
- なにせむに
- どうして…だろうか いや…ではない
-
- しかめやも
- 及ぶだろうか いや及ばない
歌意
銀も金も宝石も、どうして優れた宝であろうか。
いやけっしてそうではない。それらの宝も、子供という宝に及ぼうか、いや及ぶものではない。
出典
「万葉集」(巻五)803
作者略伝
山上憶良 生没年不詳(660-733説もある)
飛鳥(あすか)・奈良時代の役人・歌人・詩文家。出身地も不明。43歳の時、遣唐大使の下にある少録(しょうろく=記録官)として唐にわたり、5、6年後に帰国した。伯耆(ほうき=鳥取県)の守(かみ)・筑前(ちくぜん=福岡県)の守などを歴任し、70歳過ぎに帰京したが、晩年の消息は途絶えている。「万葉集」には和歌が73首ほか漢詩文も収録されている。歌風は質実で人間味あふれるものが多く「人生歌人」という呼称もある。
備考
この歌の直前には次のような長歌があり、その内容に付随した反歌としての短歌がこの「銀も金も…」である。
「瓜食(は)めば 子ども思ほゆ 栗食めば まして偲(しの)はゆ いずくより 来たりしものぞ まなかひに もとなかかりて 安眠(やすい)し寝(な)さぬ」(瓜を食べれば子どもたちのことが思われ、栗を食べればさらに子供たちのことが偲ばれる。子どもたちの面影はいったいどこから来るのだろうか。目の前にしきりにちらついて私を安眠させないことよ)