詩歌紹介

読み方
- 花の色は<小野小町>
- 花の色は うつりにけりな いたづらに
- わが身 世にふる ながめせしまに
- はなのいろは<おののこまち>
- はなのいろは うつりにけりな いたづらに
- わがみ よにふる ながめせしまに
語意
-
- いたづらに
- むなしく
-
- ふ る
- 「降(ふ)る」と「経(ふ)る」
-
- ながめ
- 「長雨(ながめ)」と「眺(なが)め」(物思いに沈む)
歌意
美しく咲き誇っていた桜の花びらも、春の長雨が降り続く間にむなしく移ろい色あせ、同じようにわたしの若さも容色もすっかり衰えてしまった。なすこともなくこの世に生きてじっと物思いに沈んでいるうちに。
出典
「古今和歌集」(巻二)春下・113、(百人一首・9番)
作者略伝
小野小町 生没年未詳
平安初期の歌人で伝未詳。六歌仙・三十六歌仙の一人。絶世の美女といわれたが、晩年落ちぶれて諸国を放浪し、各地に小町伝説を残している。家集「小町集」がある。謎の多い歌人として知られている。
備考
この歌は単なる自然詠ではなく、「花の色」に作者自身の容色を喩(たと)えて詠われている。「降る」と「経る」、「長雨」と「眺め」が掛詞(かけことば)で「長雨」は「降る」の縁語になる。それらの修辞を駆使して桜の花が色あせてゆく事態と作者自身の容色が衰えてゆく様子を重ね合わせている。