詩歌紹介

読み方
- 東風吹かば <菅原 道真>
- 東風吹かば にほひおこせよ 梅の花
- 主なしとて 春な忘れそ
- こちふかば <すがわらのみちざね>
- こちふかば においおこせよ うめのはな
- あるじなしとて はるなわすれそ
語意
-
- 東 風
- 「こち」と読んでに東の方から吹いてくる風 京都から太宰府に吹く風
-
- にほひ
- ここでは花の香
-
- おこせよ
- 寄こせよと同じ
-
- 主
- 「あるじ」 主人(道真を指す)
-
- 春な忘れそ
- 春を忘れないでおくれ
歌意
東から春風が吹いてきたならば、梅の花よ、その香りを送って寄こしておくれ。主人の私が居ないからといって春を忘れないでおくれ。
出典
「拾遺和歌集」「宝物集」
参考
「拾遺和歌集」巻十六・雑春―1006と「大鏡」には、「東風吹かばにほひおこせよ梅の花主なしとて春を忘るな」とある。
菅原道真が、大宰権帥(だざいごんのそち)として筑紫にながされる時、梅を愛した道真は、京都の邸宅に咲く梅の花に別れを惜しんで詠んだといわれている。「飛梅」は京都から飛来したと伝えられ、いまも太宰府天満宮にある。
作者略伝
菅原道真 845~903
平安時代中期の政治家・学者・漢詩人。祖父も父も文章(もんじょう)博士で学問の名家。菅原是善(すがわらのこれよし)の三男として生まれる。宇多、醍醐の二朝に仕え右大臣まで進んだ。しかし道真の異例の躍進を左大臣藤原時平に恐れられ、藤原氏側の佞臣(ねいしん)の讒言を信じた醍醐天皇から昌泰4年(901)大宰権帥に左遷され、2年後配所で薨去(こうきょ)。没後、天変地異が続き、これらが道真の怨霊と信じられ、左遷の勅書を廃棄、右大臣に復され名誉が回復された。後、正一位・太政大臣を追贈される。天満太自在天神として崇敬され、太宰府天満宮、北野神社など全国で1万社以上の社に祀られ、学問の神様として親しまれている。漢詩文集「菅家文草(かんけぶんそう)」「菅家後集(かんけこうしゅう)」がある。享年59。