詩歌紹介

CD③収録 吟者:塩路澄誠
2015年9月掲載

読み方

  • なつくさや つわものどもが ゆめのあと

語意

     夏草や=古戦場に青あおと茂った草叢(くさむら)
     兵ども=源義経が最期(さいご)をとげた高館(たかだち)で華ばなしい働きをして討死(うちじに)した武者たち
     夢の跡=全てが過ぎ去ってしまい今は何もないさま

句意

 あの栄華をきわめた堂塔も今はなく、その跡にただ夏草が生い茂り、当時の兵士達もすべてが夢のなかにある。

季語

 夏草─夏

出典

 「奥の細道」

作者略伝

松尾芭蕉 1644─1694

江戸時代前期の俳人。伊賀(三重県)上野の人。
 城主一族の藤堂良忠(とうどうよしただ=俳号蝉吟=せんぎん)につかえて俳諧の影響を受け、蝉吟の死後、京都で俳諧・古典を学びさらに江戸に出て深川の芭蕉庵に住み、俳諧師として身を立てた。
 当時盛んだった談林(だんりん)派の俳風にあきたらず自然や人間の生活の中に古典文学の美の精神を新しくさがし出した蕉風という新しい俳風をうち立てた。元禄7年(1694)大阪にて風邪と過労が原因で客死。年51。

備考

 杜甫の「春望」「国破れて山河在り城春にして草木深し」の句を芭蕉は意識していたのであろうか…。いずれにしても滅び去った藤原三代の栄華のあとを哀れみ、岩手県平泉で詠んだものである。