詩歌紹介
吟者:辰巳 快水
2011年5月掲載
読み方
- あさがおに つるべとられて もらひ<い>みず
語意
-
釣瓶(つるべ)とられて=「釣瓶」は縄や竿をつけて井戸の水を汲み上げる桶。釣瓶をとられたというのは、朝顔を擬人化している表現である。作者はむげに朝顔を取り払って釣瓶を使うにしのびず、その気持ちが下句になった。
句意
朝早く、起き出してみると、井戸の釣瓶に朝顔がからみついて咲いており、それをはずして水を汲むには忍びず、そのままにして近所からもらい水をした。
季語
朝顔─秋
出典
「千代尼句集(ちよにくしゅう)」
作者略伝
千代女 1703─1775
江戸中期に活躍した。加賀(石川県)松任(まつとう)に生まれた。16、7歳頃すでに俳名があり、以後各務支考(かがみしこう)の美濃派に入門、伊勢派の人々と交際した。51歳の時剃髪して素園(そえん)と号した。作風は平易でやや通俗的であるが、女流俳人として有名で、元禄五俳女の一人に数えられ、生前すでに「千代尼句集」が刊行された。
備考
この句は「朝顔」に主題性があるように思われるが、実は主眼は「もらい水」の方に置かれているのである。