詩歌紹介

吟者:小坂 永舟
2011年7月掲載

読み方

  • つやまや ひとあしずつに うみみゆる

語意

     一足づつ=一歩ずつ登るごとに

句意

 夏山の木々の間を分けるように、山道を登りつめると、視界が開けてきて、ひと足ごとに明るい夏の海が見えてきた。

季語

 夏山─夏

出典

 「享和句帖(きょうわくちょう)」

作者略伝

小林一茶 1763─1827

 北信濃(しなの=現在の長野県)の人。江戸後期の俳人。本名信之、通称弥太郎、亜堂・雲外と号す。
 江戸に出て俳諧を学び、後6ヵ年にわたり西国を旅し、又関東で知友を頼って転々と流寓(りゅうぐう)生活を送り、51歳で郷里に帰住し結婚するも妻や子供と死別、更に火災で家までも失い、焼け残りの土蔵の中で65歳の生涯を終えた。

備考

 俗語・方言を大胆に駆使した俳風は一茶調と呼ばれる。句数は2万句に近く「七番日記」その他の句日記に克明に筆録されている。 俳文の代表作に「父の終焉(しゅうえん)日記」「おらが春」などがある。
 「享和句帖」によれば、1803年 船で上総(かずさ=現在の千葉県)の木更津(きさらづ)に渡った41歳の時の作。