詩歌紹介

吟者:中島 菖豊
2011年8月掲載

読み方

  • まんじゅしゃげ だくほどとれど ははこいし

句意

 秋の彼岸頃に真っ赤な曼珠沙華(彼岸花)がいっぱい咲いていた。幼な子と一緒にそれを抱くほどにたくさん採りながら、ふと故郷熊本の江津(えづ)湖畔への望郷の思いと、気丈な母を慕う思いがつのってきた。

季語

曼珠沙華─秋

出典

「汀女句集(ていじょくしゅう)」

作者略伝

中村汀女 1900─1988

 熊本県生まれ。大正・昭和の俳人。本名破魔子(はまこ)。大正7年18歳から句作を始め「ホトトギス」に入会する。結婚して句作を中断するが、昭和7年再開。高浜虚子に師事し「ホトトギス」同人となる。昭和22年俳句誌「風花(かざはな)」を主宰する。昭和55年文化功労者。句集に「汀女句集」「花影」「都鳥」等。他に随筆集も多い。

備考

 結婚後10年間休んでいた俳句を再開した昭和7年(33歳)3人の子供の母親であった横浜時代の作品である。汀女の生家は熊本市江津湖のつつみのすぐ下にあり、秋には曼珠沙華が土手にたくさん咲いていた。「母恋し」には曼珠沙華をとる行為により望郷と母への思いが重なっている。