詩歌紹介

読み方
- たきおちて ぐんじょうせかい とどろけり
語意
群青世界=秋桜子の造語。群青は日本画の顔料で、高価な青い粉末。群青世界とはこの場合、大滝を取り巻く山杉を表す。
とどろけり=杉木立をとどろかす。
句意
水勢はげしく大滝が落ち続け、周辺の群青一色の杉木立をとどろかしている。鳴り渡る群青世界の神秘荘厳よ。
季語
滝ー夏
出典
句集「帰心(惜春海景)」
作者略伝
水原 秋桜子 1892-1981
東京都に生まれる。本名は豊。俳人、医師。高浜虚子に師事するも昭和9年「馬酔木(あしび)」を主宰し虚子の客観写生に対して主観写生を主張し「ホトトギス」から離れた。句集「葛飾(かつしか)」「霜林(そうりん)」「帰心」ほか。昭和38年日本芸術院賞受賞。昭和56年没す。享年88。
備考
昭和29年作。那智(なち)の滝を詠んだ句である。この句の焦点は「群青世界」という語のすばらしさにある。「ぐんじょうせかい」という音(おん)の動的効果と「とどろけり」の擬音効果によって滝の力動感を余すところなく湧出(ゆうしゅつ)させている。