詩歌紹介

読み方

  • あきのひに ひらがなばかり ははのふみ

句意

 秋の夜のともしびのもとで、ひらがなだけで綴られた、母からの手紙を読んでいる。

季語

 秋の灯ー秋

出典

 句集「慈父慈母(じふじぼ)」

作者略伝

倉田 紘文  1940-2014

 大分県杵築(きつき)市生まれ。本名は紘文(ひろふみ)。大分大学学芸学部技術科卒。父が俳人であったため幼少期から俳句に親しむ。19歳のとき「芹(せり)」を主宰する高野素十(たかのすじゅう)に出会い師事。素十の勧めにより32歳で「蕗(ふき)」を創刊、主宰。1983年、別府大学教授、のち名誉教授。大分合同新聞、山陽新聞俳壇選者、NHK俳壇主宰・選者、BS俳句王国主宰。平明にして詩情のある写生句を作った。句集に「慈父慈母」「光陰」「無量」「帰郷」「都忘れ」。他に素十関連の著書等が多数ある。

備考

 倉田紘文には、この句と対になる「秋の灯に ひらがなばかり 母へ文」もある。「母の文」の句で、すぐに連想されるのは、野口英世の母シカが英世に出した手紙。紘文の読むこの手紙も、文章はいかにつたなくとも、親の心情あふれるものであったに違いない。