詩歌紹介

読み方

  • うめいちりん いちりんほどの あたたかさ

句意

 寒梅が一輪だけ咲いた。その花を見ていると、まだ冬だけれど、わずかながら一輪ほどの暖かさが、もう感じられるようだ。

季語

 寒梅(この句の前書より)ー晩冬(冬)

出典

 句集「玄峰集(げんぽうしゅう)」(庭の巻)

作者略伝

服部 嵐雪  1654-1707

 江戸豊島(としま)郡湯島(ゆしま)の生まれ。江戸前期から中期の俳人。名は治助(じすけ)。通称孫之丞(まごのじょう)、彦兵衛(ひこべえ)。別号に雪中庵、玄峰堂など。元服後30年間武家奉公を続けた。1675年頃、松尾芭蕉に入門。武士をやめて宗匠(そうしょう)として立ち、俳諧に専念。榎本其角(えのもときかく)とともに江戸蕉門の双璧となり、優れた俳人を育てた。撰集に「其帒(そのふくろ)」「或時(あるとき)集」など、句集に「玄峰集」がある。

備考

 この句には前書があって、梅を「寒梅」としている。この前書がなければ春の句とされる恐れがある。作者は「梅一輪、一輪ほどの」と切って詠んでいるが、これを「一輪一輪ほどの」と続けると、一輪ずつ開くにつれて次第に暖かさが増すと解釈して春の句となってしまう。