詩歌紹介

CD⑤収録 吟者:山口華雋
2018年6月掲載
読み方
- 我が胸の<平野国臣>
- 我が胸の 燃ゆる思ひに くらぶれば
- 烟はうすし 櫻島山
- わがむねの<ひらのくにおみ>
- わがむねの もゆるおもいに くらぶれば
- けむりはうすし さくらじまやま
語意
-
- 我が胸の
- 自分の心のうち
-
- 燃ゆる思ひ
- 尊王攘夷への熱く激しい思い
-
- くらぶれば
- 較べてみると
-
- うすし
- 色などが薄い ここでは気持ちが浅いとか
歌意
私の心のうちにある熱い尊王攘夷への情熱にくらべてみると、あの黒黒と噴き上げている桜島の煙など、まだまだ薄いものよ。
作者略伝
平野国臣 1828ー1864
文政11年3月29日、筑前福岡藩の足軽平野吉郎右衛門(きちろうえもん)の次男に生まれるが、足軽鉄砲頭の小金丸彦六の養子になる。尊王攘夷思想に強く傾倒し、脱藩した後に京都に潜伏し、1862年に同志を集めて挙兵しようとしたが、寺田屋事件で捕えられて投獄される。その後、赦免され、但馬国生野(たじまのくにいくの)で挙兵したが敗れ、1864年7月に斬首(ざんしゅ)された。維新の魁(さきがけ)となった人物である。その他、時代背景はB18-3松口月城作「志士平野国臣」に記載されている。
備考
胸にたぎる熱き思いを、噴煙たなびく桜島の姿と重ねて比較し、自分の方が勝っているという堂堂とした作風が響いてくる。それは尊王攘夷への熱く激しい思いを薩摩藩の統治者の心の小ささと比較して詠んだのであろうか。安政7年(1860)3月3日、雪の江戸城桜田門外で幕府の大老井伊直弼(いいなおすけ)が暗殺され、18日で「万延」に改元された。この歌が詠まれたのは、幕末が激動化する同元年10月、2度目の薩摩入りをした時の作といわれる。(3度目の説もある)