6660 豪痾憎し巨木倒るる如く伊藤竹外師逝くの悲報

  • 投稿者:
    久森正詠 
  • 地区:
    三重県
  • 支部:
    正洲会中勢

 三月十六日公社関西吟詩創立八十周年記念の盛大なる祝典に酔いし慶びに浸る折り、怖れたる訃報が遂に来る。
 漢詩愛好家には、とくとご存じの全日本漢詩連盟副会長四国漢詩連盟会長愛媛漢詩連盟会長・六六庵吟社総宰「伊藤竹外」詩宗には三月二十七日三時四十五分、一年八ケ月に及ぶ闘病も薬石功をなさず、竟に仙遊なされました。
平成二十四年十二月号まで、財団誌吟剣誌舞のメーン・漢詩初學者講座を担当され、現在の指導者窪寺貫道先生に引き継ぐまでの百七十二回、十四年六ケ月に亘り全国の愛好読者と交遊なされ、日夜只管漢詩を愛して添削指導に骨身を削り扶桑漢詩界の至宝でありました。
 実は愚生誌狂久森も訃報を知るや津市から松山市まで愛車を飛ばし、お通夜告別式に馳せ参じました。
 戦中は三度死線を超えて生還されるや直ちに小原六六庵師に入門、志を継がれて書・詩の旆を立て愛媛四国に漢詩連盟を設立、平成十五年には全日本漢詩連盟の設立に多大の貢献をなされた功績は不滅です。
 誠に偉大なる故伊藤竹外先生の長逝を惜しみ御霊を拝し哀悼の衷を捧げんと哭するのみです。
 一年八ケ月の闘病「一日生涯・全力投球」の壮烈なご最期も、お念仏を捧げるご尊顔は、愛する漢詩普及を語るが如く、諭すが如く、生きるが如く、眠るが如く安らかでありました。長躯車両機動でのコーヒー多飲で全く眠れずお通夜ご遺体のお傍で苦吟した拙詩をご納棺に入れさせて頂きました。
微衷を汲まれご批正を乞います。

 哭伊藤竹外先生仙遊

忽焉訃報聽猶疑  忽焉として訃報 聽きて猶疑う
直向愛車馳路遲  直ちに向う愛車 路を馳せること遲し
三道一如師説逝  三道一如 師は 説きつ 逝き
鎚峯不見暮雲垂  鎚峯見えざるも  暮雲 垂れなん

○受話器鳴り そは 怖れたる 訃の知らせ
   いとも 急ぎて 声 声ならず
○訃を告げる 声 哭く如し 花 咲く日
   悲風 耐え得ず  花 散る日なり
○春昼に 訃報 聽きおり 震う 掌の
   受話器を 戻す ことも 忘れて
○ベル鳴りて 声 常ならず 訃を知らせ
   やがて 悲しき FAXの 来ぬ
○師は逝きぬ 花曇りして 風も無く
   永き 一夜を 師に 添いて 哭く
○花の雨 耐えて 車を 馳せらせる 
   風も つのりて 師を 送る 日よ
○四日には 遥かに お経を 唱えたし
   般若心経 ひしと 唱えん
                  合掌

投稿日時: 2014/04/03 01:42:10