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漢詩紹介

春 望   杜 甫
CD@収録 吟者:小坂永舟
2014年10月掲載
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読み方
春 望   <杜 甫>
しゅんぼう  <と ほ>

國破れて 山河在り
くにやぶれて さんがあり
城春にして 草木深し
しろはるにして そうもくふかし
時に感じて 花にも涙を濺ぎ
ときにかんじて はなにもなみだをそそぎ
別れを恨んで 鳥にも心を驚かす
わかれをうらんで とりにもこころをおどろかす
峰火 三月に連なり
ほうか さんげつにつらなり
家書 萬金に抵る
かしょ ばんきんにあたる
白頭掻いて 更に短かし
はくとうかいて さらにみじかし
渾べて簪に 勝えざらんと欲す
すべてしんに たえざらんとほっす

字解
國破 安禄山の反乱によって国の都長安がおちて宮殿や町などが破壊されたことをいう 時  時世のありさま
濺涙 涙を流す   烽火 のろし ここでは戦いのこと
家書 家人よりの便り   相当する
まったく   かんざし 外からまげにさし冠(かんむり)を固定させる
   

意解
 戦乱によって都長安は破壊しつくされたが、大自然の山や河は依然として変わらず、町は春を迎えて、草木が生い茂っている。
 時世のありさまに悲しみを感じて、(平和な時は楽しむべき)花を見ても涙を流し、家族との別れをつらく思っては、(心をなぐさめてくれる)鳥の鳴き声を聞いてさえ、はっとして心が傷むのである。
 うちつづく戦いののろしは三か月の長きにわたり、家族からの音信もとだえ、たまに来る便りは万金にも相当するほどに貴重なものに思われる。
 心労のため白髪になった頭を掻けば一層薄くなり、まったく冠を止める簪(かんざし)もさすことができないほどである。

備考
七五七年四十六歳の時、安禄山の乱で長安の敵中に軟禁されていた際、都の春景色を遠望し、自然の悠久と国の戦乱を比べ、自らの不遇を詠じたものである。 この詩の構造は、仄起こり五言律詩の形であって、下平声十二侵韻の深、金、簪の字が使われている。「唐詩三百首」に所収されている。
 
 
 
 

作者略伝
杜甫 712−770
盛唐の詩人で李白と並び称せられ、中国詩史の上で偉大な詩人である。字は子美(しび)。 少陵(しょうりょう)または杜陵と号す。洛陽に近い鞏県(きょうけん)の生まれ、七歳より詩を作る。 各地を放浪し生活は窮乏(きゅうぼう)を極め、安禄山の乱に賊軍に捕らわれる。律詩に巧みで名作が多い。 湖南省潭州(たんしゅう)から岳州に向かう船の中で没す。年五十九。李白の詩仙に対して、杜甫は詩聖と呼ばれる。

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